FDA化粧品施設登録が義務化、その第一歩は「FEI番号」
2022年に成立したMoCRA(Modernization of Cosmetics Regulation Act)により、2023年12月からアメリカで販売される化粧品に対して、製造・加工施設のFDA登録が義務化されました。世界中の化粧品企業が登録対象になっている今、その第一歩として必要なのが「FEI番号(FDA Establishment Identifier)」です。
しかしこのFEI番号、まさかの「メール申請」でしか取得できないのです。
FEI番号とは何か?
FEI番号とは、FDA(米国食品医薬品局)が各施設に割り当てる10桁の一意の識別番号で、以下のような場面で使用されます:
- 化粧品施設登録(Facility Registration)
- 製品リスティング(Product Listing)
- 通関手続き
- リコール対応や査察時の識別
つまり、FDAとのあらゆるやり取りの土台になるIDです。
FEI番号の取得方法:まさかのメール依頼!
FEI番号が既に付与されているかどうかは、まずFDAの「FEI Search Portal」で調べます。 👉 https://www.accessdata.fda.gov/scripts/feiportal/index.cfm
ここで見つからなかった場合、公式の手順としてFDAが案内しているのは次の方法です:
メールで「feiportal@fda.hhs.gov」宛に申請
メール本文には、以下のような情報を記載する必要があります:
- 施設の正式名称(法人名)
- 商号・ブランド名(DBA名)
- 代理申請であればその旨
- 施設の住所・郵送先
- 担当者名と連絡先
- 施設での具体的な業務内容(例:Cosmetic manufacturing)
- 他のFDA登録との関連(医薬品など)
- 旧社名・旧住所があればその情報
返信には1週間〜2週間程度かかることもあり、特に時差のある海外からの申請ではやきもきすることも。
なぜメールなのか? FDAはなぜ自動化しないのか?
「こんな重要な番号をなぜメールで?」と思うのは当然の疑問です。2025年現在でもメール申請でしか取得できない理由には、次のような背景があります。
1. 複数分野にまたがる共通IDだから
FEI番号は医薬品・医療機器・食品・化粧品すべてのFDA登録で使用されるため、一元的な管理が必要です。専用ポータル(Cosmetics Directなど)で勝手に発行できない構造になっています。
2. 重複・誤登録を避けるために「人の目」が必要
住所表記の違いや社名の揺れで同じ施設が2つ登録されてしまうことを避けるため、現在も人の手でチェックしています。
3. 自動化は今後の課題
FDAも将来的にはオンラインフォームやAPIによる発行を視野に入れていますが、MoCRA施行直後の今は「まず確実に処理すること」が優先されているようです。
代理で申請する場合の注意点
もし、コンサルティング会社や代理人がFEI番号の取得を代行する場合でも、FEI番号は施設を運営する企業(クライアント)名義で取得しなければなりません。たとえば「Jiro」というブランドであっても、実際の法人名(例:Taro Co., Ltd.)で申請し、Jiroは「DBA名」として記載します。
まとめ:FDAの規制はデジタルとアナログが共存している
FDAの化粧品施設登録は、Cosmetics Directというモダンなポータルで行う一方、その入口であるFEI番号は今なお「メール」という極めてアナログな手段での取得です。
最新制度と古典的手法が同居するこの不思議なギャップこそが、FDA実務のリアルとも言えます。これからFDA登録を行う方には、「まずはメール1本から」というこの現実を、ぜひ知っておいていただきたいと思います。
※この記事は2025年5月現在の情報に基づいています。最新の運用状況についてはFDA公式サイトをご確認ください。
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